私が元夫のモラハラに気がついたのは、結婚して5年経った時のことでした。忘れもしない第二子産後4ヶ月の頃のこと。
ゴールデンウィークの連休に合わせて、当時2歳の娘と4ヶ月の息子をつれて、私の実家に帰省しました。4日間ほど滞在したかと思います。その間、元夫(以下、「X」と書きます)は我が家の実家のリビングでずっとパソコンに向かい、子どもや私にも、私の両親にも見向きもしないで電話やオンライン会議などをして過ごしていました。
両親が気を遣って「お休みの日も仕事があって大変だね」と言うと、Xは「めっちゃ忙しいんですよー」と悪びれることもなく、せっかく用意された御馳走も無視して、食事の場に30分以上遅れてきました。謝ることもなく、私の両親に対して自分がいかに忙しいかをアピールしていました。私が「頼むから、みんなでの食事の場に遅れて来ないで」と訴えても、「ちょっと遅れるぐらいでそんなに怒る?」とわからない様子。「すぐ不機嫌になるよね」と親に聞こえるように嫌味まで言われました。そのやりとりを見て、心配そうに私を見つめる両親の顔が今でも忘れられません。
その上、Xは深夜遅くまで仕事をして、数時間しか睡眠をとっていませんでした。「休みに休めないのは、自分のマネジメント能力の問題でしょう」と私が諭しても、全く聞く耳を持たず、私のイライラはピークに達していました。そして帰省最終日の夜、私は「今夜こそはしっかり寝てね」と繰り返し言いました。翌日は5時間半のドライブが待っているからです。「わかってるよ」というXを残し、私は先に寝ました。
翌朝、「ちゃんと寝た?」と確認すると、Xは「うん、大丈夫だよ」と答えました。そこで、早朝に私たちは実家を出発しました。しかし、高速道路に入る直前、私たちの車は中央線を越えて反対車線を走っていました。私は今まで出したこともないような声で叫びました。幸い対向車はなく事故にはなりませんでした。Xは「あぁ、ごめんごめん」と言いながら走行車線に戻りました。
バクバクする胸を押さえて、頭に血が上るのを感じました。「寝たか、寝てないか、答えて!!!!」と私がブチ切れると「ごめん、ほぼ寝てない・・」と呟くX。すぐに運転を交代し、私は産後4ヶ月の体で5時間半のドライブを一人ですることになったのでした。
私が運転を始めると、数分で助手席で寝始めるX。
後部座席には2歳の娘と4ヶ月の息子がいるのに、あやすことすらしません。休憩の度、上の子の気晴らしをしたり、下の子を授乳したり、忙しい私を気遣うこともなく、ただただ絶望しました。
その後もイライラを通り越して、怒りと呆れと絶望でいっぱいになりながら運転してると、私はいつの間にか速度超過していました。
後ろから、サイレンを慣らしながら取り締まりの車が近づいてきました。「あぁ、やっちゃった・・・」と私がパニックになると、Xは隣で笑い始めました。
「どう見たって、取り締まりの車でしょ?周りの車だって明らかにスピード落としてたじゃん。ほんと、これでも気づかないって・・・」と笑い続けました。
その姿を見て、私は涙が止まらなくなりました。取り締まりしていた方も泣きじゃくる私を見て、驚いていました。
その後は、ずっと無言で家まで運転しました。寝ていない相手に運転を代わってもらうことはできませんでした。この人に子どもたちと私の命を預けることなんてできない、この人はもう壊れてしまっている、と絶望していました。
絶望し始めたら、今までも目をつむってきた出来事が次々と思い起こされました。「Xのやっていることはモラハラだ」とも気が付きました。どうにかしなければ、と思いました。
「これだけのことがあったら、即離婚するでしょう」と思われるかもしれません。しかし、実際に離婚するまで、この日から1年と少しかかりました。
2歳と0歳の子どもと過ごすだけでも大変な日々なのに、今まで背けていた現状を直視し、抑圧してきた自分の感情を受け入れ、現状を変えるのはとてもエネルギーのいることでした。
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